
AM3時32分 空の色は青
明日は京都に出張だというのに、まだ荷造りさえ始めていない
午前3時すぎ
シンクには、飲みかけのペットボトルが4本
冷蔵庫の中には、賞味期限をとうに過ぎ、取り残された卵が2つ
観葉植物の葉は、どこから病気をもらってきたのか、静かに黄色くなっていく
僕の部屋が、荒れている
多忙な日々に追われ、周りが見えなくなっていたことに気づくのは、こういうときだ
そしてなぜか、そういうときに限って、小さな汚れが目についてしまう
これはすぐに直さないと気が済まない現象
深夜限定・現実逃避型片付け衝動だ
とはいえ、夜型人間の僕でも、さすがにこの時間に掃除を始めるのは気が引ける
明日の自分にでっかい爆弾を渡してるようなものである(日付変わってるから今日だけどね)
……が、衝動は止められなかった
1週間放置していた、すでに一杯のゴミ袋を手に取り
卵のパックを、会心の一撃のごとくゴシャッと押し込む
袋の口をぎゅっと結び、指に引っ掛ける
シンクのペットボトルを胸に抱えて、ゴミ捨て場へ向かった
500mlのペットボトルは4本にもなると、想像より持ちにくい
こんな時、24時間ゴミ捨てOKのマンションに住んでいる自分を褒めたくなる
2年前、「次は絶対、専用ゴミ捨て場のある家に住むのだ」と、友人に謎の宣言をしていた
それを実現した自分、ナイスプレーだ
これは、過去から届いた“暮らし保険”の給付金である
家の扉を開けた瞬間、思わず立ち止まった
外が、明るい
見上げると、僕の一番好きな色が、空の一番低いところに溜まっていた
グラデーションが、信じられないほど澄んでいた
――ついこの前まで、午前5時でも真っ暗だったのに
冬の夜の長さが、まだ身体に残っている
そんな記憶と、目の前の青のまぶしさが噛み合わず、少しだけ混乱する
今、何時だっけ
ゴミを散らかさないよう足早に捨て
スマホを取り出して時間を確認する
3:32
6月の午前3時32分の空は、こんなにも明るいのか
この空を見ているのは、きっと僕と、夜勤中の誰かくらいだろう
夜はもっと長いものだと思っていた
そんな小さな気づきと、空の美しさにすっかり心を奪われ
明日の出張ことなんて、すっかり忘れてしまった
これだから夜更かしはやめられない
ps. 次の日の出張は寝坊したよ☆